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不眠の薬は昔よりは安全

 

不眠の薬は、現在はとても安全になっています。

もしかしたら、今でも睡眠薬というと、とても危険というイメージを持っている人がいるかもしれません。たとえば量が多くなりすぎて致死量に達したり、自殺目的で服用するとかですね。

これはバルビタール系の不眠の薬で、現在使われているタイプとは異なるものです。バルビツール酸系の睡眠薬は、覚醒中枢がある脳幹に直接作用する薬剤。脳幹といえば生命維持装置であり、眠らない脳として知られています。バルビツール系の薬剤を使用すると、脳幹に直接作用するため、呼吸の抑制や血圧が低下するなどのショック症状が起きがちだったのです。

また耐性がつきやすく、すぐに量をオーバーしがちなため、致死量に達しやすいという欠点も持っていました。医師の管理下で投薬すれば、それなりに安全ですが、患者が勝手に量を多くすると、とても危険な不眠の薬だったのです。そのために自殺目的に使われたというわけです。

現在の不眠の薬

いっぽう現在、おもに使用されている不眠の薬は、ベンゾジアゼピン系という薬剤です。これは抗不安薬の一種で、いわゆる精神安定剤です。そのため作用時間が長めの睡眠薬は、うつ病や統合失調症の治療を兼ねて用いられることがあります。

ベンゾジアゼピン系の不眠薬は、生命維持装置である脳幹に直接作用していました。それに対して、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、大脳辺縁系の興奮を鎮める作用が主体となっています。

脳内のベンゾジアゼピン受容体というところに結合して、ギャバ(GABA)を増やすように働きかけるのです。その結果、興奮している大脳辺縁系を鎮める効果が現れます。大脳辺縁系は、感情と本能が起こる元の場所で、人がストレスを感じたり、悩んだりすると、ここが刺激を受けます。そうすると自律神経とホルモン系の司令塔である間脳視床下部に情報が届いて、全身に交感神経系の伝令が発せられるのです。

交感神経系はアドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミンといった興奮性神経伝達物質を多く分泌するため、興奮してきます。そうなると、とても寝付ける状態ではなくなり、不眠症になるわけです。ベンゾジアゼピン系の不眠薬は、すべての元である大脳辺縁系を鎮めることにより、不眠症対策に役立ちます。

かつてのバルビツール酸系の不眠薬は、覚醒中枢に直接働きかけて、「無理やり眠らせる」ようなイメージがありました。いっぽう現在使われているベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、抗不安薬の一種ですから、気分をリラックスさせて落ち着かせることにより、眠気を誘うわけです。

不眠の薬も安全とは言い切れない

このように、かつてのバルビタール系の不眠の薬と比べれば、たしかに現在のベンゾジアゼピン系の薬剤は安全といえます。昔の睡眠薬は、ちょっと量をオーバーしただけで致死量に達したことを思えば、現在の睡眠薬は、多く服用しても命に別状はありません。

しかし現在の不眠薬に、依存性や副作用が全くないということではありません。
たとえば睡眠薬のハルシオンやアモバン、マイスリーは、即効性があるために、依存性がつきがちです。いったんその効果を知ってしまうと、ちょっと寝付けないだけで、手が出てしまうようになります。服用してから30分もすれば、眠くなってくるからです。

また現在は、インターネット上でも不法にハルシオンなどを入手できるようです。また海外経由で入手ということもあるでしょう。そうなると勝手に服用量をオーバーしてしまい、不眠薬を手放せなくなります。いったん睡眠薬を常用するようになると、急に服用をやめたときに、禁断症状(離脱症状)が現れます。そのため、ハルシオンなどを服用しないと眠れなくなり、睡眠薬の依存症に陥ります。

また、なかには不眠の薬とアルコールを一緒に服用する人も出てきます。
これは、安全といわれるベンゾジアゼピン系の睡眠薬の作用を強める結果となります。なぜならお酒も、脳内のギャバを増やすからです。その結果、中途覚醒して、夢遊病の症状に発展することに。夜中に起きてからのことを一切覚えていないという、危険な睡眠薬の副作用が現れるのです。夜中に起き出して、母親を銃で射殺した事件もありました。本人に記憶はないのです。

現在の不眠の薬は、昔と比べれば安全ではありますが、それは命に別状はないという意味です。睡眠薬の副作用や危険性が全くないということではないのです。たとえ医師の指示通りに服用していても、慢性的に使用していると、依存性がついて手放せなくなります。短期間に限って服用するのが安全といえます。また、長期的に服用していると、腸内のビオチンが減少して、さらなる不眠を引き起こす危険も秘めています。

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